2009/11/11

再発髄芽腫に対する大量化学療法

High-dose chemotherapy and autologous hematopoietic progenitor cell rescue in children with recurrent medulloblastoma and supratentorial primitive neuroectodermal tumors: the impact of prior radiotherapy on outcome.

小児再発髄芽腫およびテント上PNETに対する、自家造血幹細胞移植を伴った大量化学療法 :再発前の放射線療法の有無のもつ意義

Cancer. 2009 Jul 1;115(13):2956-63.

背景

小児再発髄芽腫およびテント上PNETにおける、骨髄破壊的大量化学療法の役割は、議論のあるところであり、特に、脳脊髄照射治療後に再発した症例において、問題となる。

方法

ロサンジェルス小児病院に、通常化学療法及び骨髄破壊的化学療法のために紹介となった、髄芽腫およびテント上PNETを再発した患者について、後方視的に予後を調査した。

結果

合計33人の患者が骨髄破壊的化学療法のために紹介となった。うち14人は移植前に発生した有害事象のため、移植に至らなかった。19人(6人が再発前の放射線療法なし、13人があり)が移植を受けた。前処置はthiotepaが骨格となり、一回移植または、連続した複数回の移植が行われた。3年無病生存率は再発前の放射線療法を受けなかった患者群と受けた群で、それぞれ83%±15%、20%±12%であった。(P=0.04)放射線療法を再発前に受けなかった患者のうち1人が移植関連毒性で死亡し、4人が無病生存中である。再発前に放射線治療を受けた患者のうち9人に、移植関連毒性による死亡(4人)、または腫瘍再発(6人)がみられた。(うち1人は両方がみられた)放射線療法から一年以内の骨髄破壊的化学療法が、移植関連毒性死亡を予測する因子であり(p=0.03)、また診断時の髄空内転移および、移植後最初の化学療法への反応性の悪さが、移植後再発を予測する因子であった(p=0.08)。

結論

骨髄破壊的thiotepa中心の大量化学療法によって、再発前に放射線療法を受けておらず、化学療法に反応する患者の多くを治癒することができた。脳脊髄放射線療法後に再発した患者の予後は不良であるが、再発時に予後良好因子を持った患者の治癒は、決して不可能ではない。


コメント

ロサンジェルス小児病院単独成績の報告。再発髄芽腫の治療は、単独施設からの報告がほとんどで、症例が不均一であったり、治療法がまちまちで、比較検討が難しい。そのなかでも、末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法は、数少ない有望な治療法であることは、数多くの報告から明らかである。しかし、治療関連毒性の強さを考えると、症例の選択は非常に重要である。本報告は、大量化学療法によって治癒可能な患者群を示唆しており、注目に値する。著者らが考察の中で述べているなかで、再発患者のうち、一部しか移植部門に紹介がなかった点や、紹介があったものの、移植までこぎつけなかった症例が多いことは、今回の予後分析の対象となった患者が、かなり選択された症例のみであることは、注意しておかなければならない。今後、最適な移植適応と移植レジメンを考える上で、メタアナリシスによる多症例の検討は必須であり、非常に困難ではあるが、再発症例の他施設共同前向き研究が、必要な時期に来ているといえよう。

PubMedリンク:
http://bit.ly/18zTrZ

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