2012/02/02

小児髄芽腫(標準リスク)対する化学療法の最新情報


私が参加している小児脳腫瘍コミュニティで、悪性小児脳腫瘍の代表的疾患である髄芽腫の治療中のお子さんの親御さんから以下のような質問がありました。

親 御さんからの書き込みの要旨:10歳のお子さん、髄芽腫の全摘および放射線治療後。これまでの投稿などより、標準リスク群(残存腫瘍<1.5m3、 髄液細胞診陰性、3歳以上)と思われます。この群における米国の標準治療であるA9961プロトコールを開始後、全8コース中6コース終了したところで、 副作用と思われる高音難聴と腎機能障害が出現しました。プロトコールに規定のある治療中止レベルではないようですが、7コース目から薬(シスプラチンと思 われる)が半分になる予定だそうです。腎機能障害は軽微で一過性、難聴は電子音がききとりづらいくらいでほとんど日常生活に影響がないようですが、薬が減 ることで治療効果が弱まってしまうのが心配ということです。

この件に関連する非常に重要なエビデンスが、つい最近発表されてお り、そのお子さんの治療方針に影響を与える可能性があると思いましたので、早速以下のような投稿をしました。このブログの読者の方で、このプロトコールを 用いている髄芽腫の患者さんや、医師を知っていたら、情報を広めてください。

私のコメント投稿:

3種併用化学療法とはおそら く、ビンクリスチン(オンコビン)、シクロフォスファミド(エンドキサン)、シスプラチン(ランダ)による治療ではないでしょうか。発症時3歳以上の、標 準リスク群髄芽腫における、全脳全脊髄放射線療法に続いて行われる化学療法のレジメンで、米国の標準治療です。
このプロトコールは、 1996年に始まった臨床試験で、現在も長期予後のフォローアップが続いていますが、すばらしい生存率(8年無病生存率78%)を達成した、小児脳腫瘍の 歴史でも数少ないサクセスストーリーです。おそらく今年のどこかで論文公表されますが、それに先立って昨年9月に米国の神経科学会で発表されたデータを紹 介します。

シスプラチンを含む化学療法を8コース行うのがこの治療プロトコールの特徴で、シスプラチンの総投与量がとても大きくなってしま い、お子さんのように聴力と腎機能に高頻度で障害が起こるのが大きな問題です。特に聴力障害は、回復しないことが多く、サバイバーのQOLを著しく低下さ せます。
このプロトコールでは聴力障害などが発生してきたときに、シスプラチンの減量または中止が行われるように規定されていますが、かな り多くの患者さんが、途中でシスプラチンを中止せざるを得なかったようです。当然、    さんや主治医の先生と同じく、そのような患者群では治療効果が 下がり、再発が多くなるのではという懸念がありました。

しかし、結果としてはシスプラチンが予定の75-100%投与できた群(194 人)、50-75%しか投与できなかった群(113人)、25-50%しか投与できなかった群(26人)、0-25%しか投与できなかった群(10人)の 4群において、無病生存率に統計学的に有意な差がありませんでした。また、シスプラチンの投与量と無病生存率の分析においても相関関係は示されませんでし た。

投与量が50%未満であった症例は全体の10%ほどなので、やや極端な例かもしれませんが、50-75%の群は人数も多く、信頼できる データだと思います。髄芽腫治療の世界的権威の二人の神経腫瘍医Dr. PackerとDr. Gajjar、小児がん分野でもっとも有名な生物統計学者Dr. Boyettらを発表者に含む紺発表は、今後の髄芽腫治療の化学療法プロトコールにおいては、シスプラチンの総投与量を減らすべきで、それによって生存率 を減少させること無く、治療毒性が軽減できるであろうと結論づけています。

この発表の英文要旨は、以下のサイトから入手できますが、登録後に購入しなくてはなりません。
http://onlinelibrary.wiley.com.ezproxyhost.library.tmc.edu/doi/10.1002/ana.v70.15s/issuetoc
(ページ真ん中あたりのModerated Poster Session (pages S115–S117)というPDFです)

長くなりましたが、このプロトコールにおいて、腎機能・聴力障害が出てきたら、プロトコールどおりにシスプラチンを減量・中止しても、抗腫瘍効果には大きな影響は無いということです。
ただし、ほかのプロトコールで同じことが言えるかは、まったく別問題なので、注意してください。

2011/12/11

小児脳腫瘍の診断・治療と今後について

先月、NPO法人キャンサーネットジャパンhttp://www.cancernet.jp/のイベントで、小児脳腫瘍についてお話させていただく機会があり、その内容がインターネット上に公開されています http://bit.ly/s1V8Dw。専門家以外の幅広い対象に向けた1時間の講演です。小児脳腫瘍の総論、主要なタイプについての各論が中心ですが、最後に小児脳腫瘍研究や日本の小児がん対策に関する、最近のトピックについても触れています。小児脳腫瘍に興味のある方の、なにか参考になれば幸いです。

2011/02/09

髄芽腫研究のトピック(NCI Cancer Bulletinより)

2011/01/25号◆スポットライト
「小児脳腫瘍、よりよい治療を模索して」
NCI Cancer Bulletin2011年1月25日号(Volume 8 / Number 2)

http://bit.ly/hegp1k

小児脳腫瘍、よりよい治療を模索して癌治療の有害な副作用を最小限に抑えることはいかなる場合でも重要だが、とりわけ小児脳腫瘍治療では重要である。小児において最も頻度が高い悪性脳腫瘍である髄芽腫の大多数の症例は治癒可能であるが、放射線治療や化学療法により若年のサバイバーに認知障害が生じることがあり、その後長い生涯において健康障害につながることもあるからである。

新規治療の発見とすべての患者の治療改善のために、DNAシークエンス法やその他の新たな方法を用いて腫瘍ごとの特徴を明らかにする試みが行われている。その目的は腫瘍の背景にある生物学に即したよりよい患者分類の実施と、このような情報に基づいた新規治療の開発である。

「臨床医であるわれわれはみな、より洗練された髄芽腫治療を見つけ出そうと頑張っています。治癒できない患者がいることも事実ですし、発達過程の脳にとって治療はきついものだからです」とテキサス小児がんセンターおよびベイラー医科大学のDr. Will Parsons氏は述べた。同氏は先月刊行されたScience誌の髄芽腫に関する遺伝学的研究の筆頭著者である。

この報告と先月発表された別の2件の報告は疾患発生原因を遺伝および細胞レベルで検討したものであった。Science誌掲載論文は髄芽腫の「遺伝的見取り図」を調査するものであったが、別の報告では疾患の分子学的分類が説明され、これらの腫瘍を調べる新たな方法が紹介された。

「この3件の研究は数多くのゲノム学に基づく研究の先端を行くものですから、近い将来、髄芽腫の診断基準や髄芽腫患者の新規治療の開発方法は再定義されるでしょう」とNCI癌治療評価プログラム(CTEP)のDr. Malcolm Smith氏は述べた。Smith氏は研究に参加していない。

髄芽腫が複数の発症要因を持つ疾患であることは、医師の間では長く知られていた。比較的容易に治癒する腫瘍がある一方で、とりわけ再発性の腫瘍のなかには治療抵抗性を示すものも存在する。このようなばらつきの原因が完全に理解されたわけではないが、遺伝学的研究から髄芽腫にはそれぞれ特徴的な遺伝的・臨床的性質を持つタイプがすくなくとも4つ存在することが示された。

小児腫瘍のプロファイリング分析

「治療成績に影響を与えることなく安全に治療強度を下げることができる子どもたちをわれわれが知ることができるならば、これはじつに大きな第一歩となります」とParsons氏は述べた。「2歳、3歳、あるいは4歳の子どもに放射線治療を行うことは、潜在的に重大な健康障害をもたらしかねないということです」。

この遺伝学的研究の中で、ジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターのDr. Victor Velculescu氏らは、髄芽腫患者から採取した22の腫瘍における遺伝子変異と遺伝子コピー数の変化を調べた。研究者らは乳癌、大腸癌、そして成人で最も頻度が高い脳腫瘍である神経膠芽腫などの成人癌に関する遺伝学的な先行研究にも同様の手法を取り入れた。(先週、研究チームは膵神経内分泌腫瘍の特徴を分析した報告書を発表した。)

おそらくこの研究結果で最も注目される点は、この小児癌で認められた遺伝子変異数が成人癌で認められる数よりも少ないことである。平均して髄芽腫では11の遺伝子変異が認められ、そのうち癌において重要な役割を果たしているのは1つ、または複数の遺伝子異常であろうと考えられるが、対照的にこれまでの研究から成人癌に認められている変異は50~100の変異であると研究者らは報告した。

「遺伝子変異数が少ないことは小児癌すべてにおける一般的特徴であろうとわれわれは考えています」とVelculescu氏は述べた。理論的には、腫瘍の変異が少なければ、研究者は研究対象とする遺伝子変異の範囲を狭めることにより、ある疾患における最も重要な変異に焦点を絞りやすくなると同氏は続けた。

癌におけるエピジェネティック変化

NCIの資金提供による遺伝学的研究により、Wntシグナル経路やhedgehogシグナル経路における変異といった髄芽腫に関してこれまで知られている変異の存在と一般的頻度が確証された。しかし研究者は幾つかの腫瘍でMLL2 遺伝子とMLL3遺伝子にこれまで知られていなかった変異が潜んでいることも発見した。

これらの変異はヒストンのメチル化に関わっている。ヒストンのメチル化はクロマチン構造とその他の遺伝子制御に影響を与えるエピジェネティック(非遺伝的、後成的)過程である。これらの変異が髄芽細胞腫で果たす役割に関してはまだ知られていないが、他の癌におけるエピジェネティック過程関連の遺伝子変化に関する最近の報告と、一致する知見である。「最近の他の研究とともに考えると、この新たな知見は後成的な遺伝子修飾が重要な発癌経路の一つとなっていることを示しています」とScience誌掲載論文の共著者であるNCIの癌ゲノム学オフィスのDr. Daniela Gerhard氏は述べた。

「しかしデータの収集は始まったばかりですから、われわれはこれらの変化の重要性を判断しなくてはなりません」と同氏は続けた。例えば、エピジェネティック変化が疾患を引き起こすものであるのか、もしくはこれらの変化が腫瘍の生存にとって重要なものであるのかといったことは知られていない。Gerhard氏は、これらの研究ははじめてゲノムに目を向けたというだけのものであると慎重に述べたうえで、「これからももっと多くの遺伝的変化が髄芽腫で発見されます」と語った。

4つの特徴的サブタイプ

2番目の研究でトロントの小児病院(Hospital for Sick Children)のDr. Michael Taylor氏らは、100以上の腫瘍における遺伝子発現とDNAコピー数の変化に対する解析に基づき、髄芽腫の4つの明確なサブタイプを同定した。それぞれのサブタイプには、人口学的特性、臨床的特徴および治療成績に明確な特徴があり、腫瘍の遺伝子シグネチャーや異常パターンにも明確な特徴がある患者が含まれていた。この知見はJournal of Clinical Oncology(JCO)誌に発表された。

Smith氏はJCO掲載論文で同定されている腫瘍のタイプはその他の研究者らの研究成果からも裏づけられると指摘した。腫瘍タイプは患者の特徴的な転帰と関連しているため、今後これらの腫瘍分類を用いて医師の治療決定を行える可能性があると同氏は続けて述べた。例えば、とりわけ悪性度の高いタイプの患者に対しては治療強度を上げることが可能であろうし、初回治療での奏効の可能性が高いとされる患者では不要な治療は保留しておくことが可能となろう。

予期せぬ起始細胞

3番目の研究では、髄芽腫のあるタイプにおいて、これまでの知見と異なる起始細胞が一つ同定された。先行研究では、髄芽腫は腫瘍が発生する場所である小脳が起源であると考えられてきた。しかし、聖ジュード小児研究病院のDr. Richard Gilbertson氏らは、Wntシグナル経路の変化に関連する腫瘍が小脳ではなく背側部脳幹に由来することを見出した。

「われわれは起始細胞が異なっているかもしれないという仮説を立てていましたが、起始細胞の所在が小脳ですらないということは驚くべきことでした」とGilbertson氏は述べた。この知見は「髄芽腫の異なるサブタイプは本質的に別々の疾患であるということをありのままに示すものです」と同氏は述べた。

Nature誌で研究者らは、これらの疾患に対しては異なる治療法が求められることになると結論づけた。研究の一部で同研究チームはこれらの腫瘍の生物学的研究をさらに進めていくうえで利用できるマウスモデルを開発した。

標的治療の試験

髄芽腫の生物学的洞察により、同疾患への標的治療の臨床試験がすでに開始されている。Hedgehogシグナル経路を阻害するGDC-0449と呼ばれる試験薬の評価が再発性髄芽腫患児に対して行われている。昨年夏に研究者らは、12人の若年患者を含む第1相試験において同薬の安全性と良好な忍容性が認められたとの報告を行った。

「目下のところ、これらの患者へ導入できる新規治療があることに期待と興奮を抱いています」と聖ジュード小児研究病院のDr. Amar Gajjar氏は述べた。同氏はNCIが依頼した現在行われている同薬に関する小児脳腫瘍コンソーシアム臨床試験の責任者である。

今のところ、これまで発表されている研究ではWntサブタイプ患者の治療成績は極めて良好な傾向にあると同氏は述べた。「ですから、これらの患者に対する臨床的課題は、良好な治療成績を維持しつつも化学療法の強度を慎重に慎重を重ねたうえで下げていけるかということになります」。

髄芽腫が最初に報告された1925年以来、これらの腫瘍の生物学に関する研究成果は膨大な量に上る。かつては一様に致死性であった髄芽腫であるが、医師たちは患者の4人に3人を治癒できるようになっている。複数の研究者が指摘しているように、現在の主要な課題は、現在の生存率をさらに向上させつつ、一方で治療の副作用を軽減していくことである。

また、今後は髄芽細胞腫の各腫瘍分類に認められる分子生物学的多様性が、実は「4つの別個に独立した疾患を生じさせている」のではないかという発想を探っていくことができるとTaylor氏らは報告をまとめている

http://bit.ly/hegp1k

2010/09/03

上衣腫の分子生物学的ステージング

Molecular staging of intracranial ependymoma in children and adults

小児および成人の頭蓋内上衣腫における分子生物学的ステージング

Clin Oncol. 2010 Jul 1;28(19):3182-90.

要旨

目的:現在のステージング方法において、頭蓋内上衣腫の生物学的な性質は、予想が困難である。上衣腫の現行の分類基準を補完する、分子生物学的ステージングを作成するために、上衣腫細胞において高頻度で見られる遺伝子異常を同定し、その予後に与える影響を評価した。

対象と方法:スクリーニングコホートとして、122人の上衣腫患者の標準的治療を行う前の検体を用い、比較ゲノミックハイブリダイゼーションアレイ(array CGH)を行った。予後因子としての可能性があるDNAコピー数異常について、170人の独立した上衣腫患者コホート殻の検体を用い、FISH法によって、確認を行った。コピー数異常は、臨床情報、組織病理学診断結果、そして生存データとの’関連を検討した。

結果:スクリーニングコホートにおいて、1q(1番染色体長腕)の増加およびCDNN2A遺伝子(p16癌抑制遺伝子)のホモ欠失が、もっとも有力で独立した予後不良因子であった。対照的に、染色体9、15q、18の増加と染色体6の減少は、予後良好因子であった。これらの結果に基づいて、3つの遺伝学的リスク群からなる、分子生物学的ステージングシステムを作成し、確認のためのコホートにおいても、予後予測の正確さが確認された。likelihuud ratio testや多変量Cox regression解析によっても、これらの新たな遺伝学的マーカーを追加することで、既存の予後因子よりも予後予測の正確さが向上することが示された。

結論:上衣腫において、ゲノム異常は病気の進行と生存率に対する、強力かつ独立したマーカーである。遺伝的マーカーをを、既に確立された臨床的および組織病理学的要素に追加することにより、治療結果の予測を向上させることができる可能性がある。本分析は通常のパラフィン固定標本においても行うことができるため、人口ベースのコホートを対象にした多施設臨床研究において、これらのマーカーの有効性を確認することは、すぐにでも可能である。

コメント:上衣腫は小児の脳腫瘍のなかで3番目に多く、決して満足のいく治療成績とはいえない脳腫瘍である。生存率の向上に寄与すると考えられる化学療法がまだ見つかっておらず、手術と放射線療法が治療の中心である。しかし、放射線治療が若年患者に与える影響は大きく、放射線療法を減量、または省略する治療研究の対象を選ぶことは、緊急の課題である。本研究が明らかにした、予後不良マーカーは他の研究でも示唆されており、有望性が高い。また、このような研究からさらに詳細な予後不良遺伝子異常が見つかれば、新たな治療標的としての期待も高まる。

リンク http://bit.ly/bJ7C4e

2010/08/04

米国国立がん研究所の情報サイト

「がん情報サイト」の説明を転機

「がん情報サイト」は、日本で唯一National Cancer Institute(米国国立がん研究所)とLicense契約している、がんの最新治療情報や治療成績、臨床研究の情報、がんに用いられる標準治療薬や支持療法薬といった、がんに関する最新かつ包括的な情報を配信するサイトです。

非常に信頼度が高いがんの最新情報をまとめた有料サイトです。日本語の訳も正確で、アップデートも頻繁に行われています。

下のリンクから、小児脳腫瘍のページに行けます。
小児脳腫瘍の全般的な情報から、各腫瘍タイプ別の治療方法が、最新の標準治療を中心に詳しく記述してあります。

http://bit.ly/aNux7z

概論について、本ブログ独自の翻訳を提供します。

A childhood brain or spinal cord tumor is a disease in which abnormal cells form in the tissues of the brain or spinal cord.

こどもの脳や脊髄の腫瘍は、異常な細胞が、脳や脊髄の組織をつくって増える疾患です。

There are many types of childhood brain and spinal cord tumors. The tumors are formed by the abnormal growth of cells and may begin in different areas of the brain or spinal cord. Tumors may be benign (noncancerous) or malignant (cancerous). Together, the brain and spinal cord make up the central nervous system (CNS).

こどもの脳脊髄腫瘍には、たくさんの種類があります。これらの腫瘍は、細胞の異常な増殖によって、脳や脊髄のいろいろな場所に発生します。腫瘍は良性(非がん性)のこともあれば、悪性(がん性)のこともあります。中枢神経系(CNS)は、脳と脊髄からなる器官系統です。

The brain controls many important body functions.

脳は、多くの重要なからだの機能を制御します。

The brain has three major parts:

脳には、三つの主要部位があります。

• The cerebrum is the largest part of the brain. It is at the top of the head. The cerebrum controls thinking, learning, problem solving, emotions, speech, reading, writing, and voluntary movement.

• 大脳は脳の中で一番大きな部位で、頭頂部に位置しています。大脳は。思考、学習、問題解決、感情、会話、読字、そして随意運動を、制御します。

• The cerebellum, which is in the lower back of the brain (near the middle of the back of the head), controls movement, balance, and posture.

• 小脳は、脳の後方(後頭部の真中あたり)に位置し、動作、バランス、姿勢を制御します。

• The brain stem connects the brain to the spinal cord. It is in the lowest part of the brain (just above the back of the neck). The brain stem controls breathing, heart rate, and the nerves and muscles used in seeing, hearing, walking, talking, and eating. 。

• 脳幹は、脳と脊髄を接続し、脳の一番下部(首の後ろすぐ上)に位置します。脳幹は、呼吸、心拍、さらには、視覚、聴覚、歩行、会話、食事に用いる神経や筋肉を制御します。

The spinal cord connects the brain with nerves in most parts of the body.

脊髄は、脳と体中の神経をつなぐ役割を果たします。

The spinal cord is a column of nerve tissue that runs from the brain stem down the center of the back. It is covered by three thin layers of tissue called membranes. These membranes are surrounded by the vertebrae (back bones). Spinal cord nerves carry messages between the brain and the rest of the body, such as a signal from the brain to cause muscles to move or from the skin to the brain about the sense of touch.

脊髄は、脳幹から始まり、背中の中央を通って下までのびる、柱状の神経組織です。三層の膜とよばれる薄い組織によって包まれています。これらの膜はさらに、脊椎(背骨)によって囲まれます。脊髄神経は、脳とそれ以外のからだの部分のあいだの、情報のやり取りを行います。たとえば、脳からの筋肉を動かす命令を伝えたり、皮膚からの触覚を脳に伝えたりします。

Brain and spinal cord tumors are a common type of childhood cancer.

脳脊髄腫瘍は、小児がんのなかでは、頻度が高いもののひとつです。

Although cancer is rare in children, brain and spinal cord tumors are the third most common type of childhood cancer, after leukemia and lymphoma. Brain tumors can occur in both children and adults. Treatment for children is usually different than treatment for adults. (See the PDQ treatment summary on Adult Brain Tumors for more information.)

がんは子供には稀な病気ですが、脳脊髄腫瘍は、白血病とリンパ腫についで、3番目に頻度が高い小児がんです。脳腫瘍は、こどもにも成人にも発生します。通常こどもに対する治療は、成人に対する治療とは異なります。(成人の脳腫瘍についてはPDQ治療サマリーを参照)

This summary describes the treatment of primary brain and spinal cord tumors (tumors that begin in the brain and spinal cord). Treatment of metastatic brain and spinal cord tumors, which are tumors formed by cancer cells that begin in other parts of the body and spread to the brain or spinal cord, is not covered in this summary.

このサマリーは、原発性脳脊髄腫瘍(脳または脊髄から発生する腫瘍)の治療について記述しています。体のほかの部位で発生した腫瘍が脳や脊髄に拡がる、転移性脳脊髄腫瘍の治療については、本サマリーでは取り扱いません。

There are different types of childhood brain and spinal cord tumors.

こどもの脳脊髄腫瘍にはいろいろな種類があります。

Childhood brain and spinal cord tumors are named based on the type of cell they formed in and where the tumor first formed in the CNS.

小児脳脊髄腫瘍は、もとになる細胞の種類と腫瘍が発生する中枢神経系の部位によって、命名されています。

2010/03/20

放射線療法後の再発髄芽腫に対する大量化学療法プロトコールによる治療成績

High-dose carboplatin, thiotepa, and etoposide with autologous stem cell rescue for patients with previously irradiated recurrent medulloblastoma

前治療として放射線照射を受け、再発した髄芽腫患者に対する、自己造血幹細胞移植による骨髄救済を伴う大量カルボプラチン・チオテパ・エトポシド療法

Neuro Oncol. 2010 Mar;12(3):297-303

要旨

前治療として放射線照射を受けた髄芽腫の再発の致死率は非常に高い。放射線療法の既往があり、転移ステージMo-M3[*1]の再発患者のうち、プロトコール参加前までに、手術や導入化学療法で、腫瘍量を最小限まで減らすことができた(minimal disease)患者を対象とした。治療は、カルボプラチン(carboplatin: Calvert 計算式[*2*3]にて、AUC 7mg/ml min, max500mg/m2/d)をday -8 から -6、チオテパ(thiotepa: 300mg/m2/d)と(etoposide: 250mg/m2/d)をday -5 から -3まで投与し、自己造血幹細胞移植による骨髄救済(sutologous stem cell rescue: ASCR)をday 0に行った。移植時年齢7.6-44.7歳(中央値13.8歳)の25人の患者が本治療を受けた。うち3人(12%)の患者は、治療関連毒性(多臓器不全2人、アスペルギルス感染とVOD[*4]合併1人)により、移植から30日以内に死亡した。腫瘍の再々発が、16人でみられた(移植後中央値8.5ヶ月: 2.3-58.5ヶ月)。6人の患者が移植後中央値151.2ヶ月(127.2-201.6ヶ月)の時点で無病生存中。Kaplan-Meier曲線による推定によると、移植後の中央値生存期間は26.8ヶ月(95%信頼区間: 11.9-51.1ヶ月)であり、移植後10年無病生存率および10年生存率はともに24%(95%信頼区間: 9.8-41.7%)であった。再発治療開始前の転移が無い(M-0 と M-1以上の比較)、再発時の組織診断が行われていない、術後前治療が放射線治療のみ(放射線治療+化学療法との比較)、という要因は無病生存率の増加と関連していなかった(それぞれP=0.33, 0.34, 0.27)。救済療法として追加の放射線療法を受けた患者(5人、P=0.07)および、再発病変が導入化学療法に反応性を示した患者(10人、P=0.09)において、無病生存率が高い傾向をみとめた。本救済療法が、放射線療法の既往がある再発髄芽腫患者の一部に、長期無病生存をもたらした。追加の放射線療法は、良好な成績に関連している可能性がある。

[*1] 髄芽腫の転移による分類 M0: 転移なし M1: 髄液中のみ腫瘍細胞確認 M2: 原発巣外の頭蓋内転移 M3: 脊髄への転移 M4: 脳脊髄外再発(主として骨髄)
[*2] 腎機能に基づく投与量修正:投与量(mg/body) = 目標AUC×(GFR + 25)
[*3] AUC(血中濃度曲線下面積) area under the blood concentration time curve
[*4] VOD: veno-occlusive disease: 肝中心静脈閉塞症

コメント

1998年に著者らがJ Clin Oncolに報告した、再発髄芽腫に対する、大量化学療法プロトコールの追加報告である。今回の分析では、より予後が悪いと考えられる、前治療で放射線治療を受けた群にお絞って分析をした。(発症時3歳未満などで、放射線療法を回避して再発した患者に対する、第一選択の救済療法は手術+放射線療法)24%という長期生存率は、決して満足のいく数字ではないし、初期治療から大量化学療法が行われるようになった現在の再発患者に、かならずしも該当しない救済療法ではある。しかし、放射線療法後の再発髄芽腫において、追加放射線照射が有効であることを示唆し、大量化学療法が腫瘍の化学療法抵抗性を克服するという原則を改めて証明した意味で、貴重な報告であろう。

脳への再放射線照射や追加照射に対しては、異論があることは当然であり、非常にリスクの高い治療である。しかし、期待できる生存率が20%台の、再発髄芽腫のような疾患における最大のリスクは再々発である。あるリスクをとらないことが、最大のリスクをとることになることを、腫瘍医は常に意識しなければならない。

リンク:http://bit.ly/aPDI3v

2010/03/19

非定型脈絡叢乳頭腫

Atypical choroid plexus papilloma: clinical experience in the CPT-SIOP-2000 study.

非定型脈絡叢乳頭腫:国際共同臨床研究CPT-SIOP-2000の結果より

J Neurooncol. 2009 Dec;95(3):383-92

要約

非定型脈絡叢乳頭腫(atypical choroid plexus papilloma: APP)とは、新たに分類された、脈絡叢腫瘍(choroid plexus tumor: CPT)の中間悪性度亜型であり、臨床成績はまだ報告されていない。今回、われわれは現在進行中のCPTの臨床研究、CPT-SIOP-2000に登録された患者群の最初の分析結果を報告する。

化学療法を要する患者の国際登録と無作為化試験が2000年に始まった。APPに対しては、最大限外科的に摘出することが推奨された。術後、完全摘出できた患者は経過観察を行い、一方不完全摘出または転移を伴うAPP患者には、6コースの化学療法(エトポシドとビンクリスチンに加え、カルボプラチンまたはシクロフォスファミドを投与)が行われた。リスクに応じて、放射線療法は3歳以上の患者のみに行われた。

中央診断で確認されたCPT患者106人中、30人がAPP、42人が脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma: CPP)34人が脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma: CPC)であった。APP患者(中央年齢0.7歳)はCPPやCPCの患者(ともに中央年齢2.3歳)に比べて、有意に低年齢であった。完全摘出は68人(64%)の患者で可能であった(CPP:79%, APP:63%, CPC:47%)。診断時に転移が認めたのは、APPの17%、CPPの5%、CPCの21%であった。術後化学療法を受けた9人のAPP患者全員において、化学療法2コース後に早期の反応を認めた:完全奏効2人、部分奏効4人、不変3人。経過観察群の15人については、1人に再発が見られたが、現時点で全員生存中である。化学療法群においては、診断時に転位を認めた、不完全摘出後の1人が腫瘍死した。

APPの診断は組織学的に定義されるが、腫瘍増殖マーカーであるKi-67/Mib-1と、腫瘍抑制タンパクp53の陽性率中央値は、3つの亜型で増加しており、CPPよりもAPPさらにAPPよりCPCで陽性率が高かった。これは、CPTの亜型が、悪性度に応じた一般的な分類であることを示唆する。

この順序は、研究プルトコールに則って治療を受けた92人の患者の臨床成績によっても、改めて確認することができる。5年無病生存率は、39人のCPPで92%、24人のAPPで83% 、そして29人のCPCで28%であった。同様の治療成績の順序は、全106人の登録患者の無病生存率においても認められた。APPの化学療法への反応は良好であった。APPがCPPとCPCの中間に位置することは、臨床データからも示された。

コメント

稀な小児脳腫瘍である、脈絡叢腫瘍の国際多施設治療研究である、CPT-SIOP-2000 http://choroidplexustumors.com の中間報告である。本腫瘍のように希少な小児脳腫瘍の診療成績を向上させるには、国際的な共同治療研究を行うしかないが、CPT-SIOPはその成功例といえる。中央診断率の高さにも注目したい(全登録症例133中、116症例で中央診断)。

本報告は、CPT-SIOP-2000の包括的な最終報告ではない。2006年に新たに提唱された中間悪性度群非定型脈絡叢乳頭腫(atypical choroid plexus papilloma: APP, WHO Grade 2)の臨床像と組織像、さらには免疫組織染色による生物学的特性をに焦点を当てた分析が、主眼となっている。APPが臨床的にも組織学的にも、そしておそらく生物学的にも、良性腫瘍と考えられる脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma: CPP, WHO Stage1)と、明らかに悪性の脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma: CPC, WHO Stage3)の中間に位置する、明確な亜群であることが、示された。

CPT-SIOP-2000の、主要な目的は、化学療法レジメンにおいて、カルボプラチンとシクロフォスファミドを比較することであるが、その結果はまだ明らかになっていない。しかし、ハイリスク群(完全摘出できないAPPやCPC)の治療成績は、まだまだ満足できるものでないことは、この中間報告が示している。

CPT-SIOP-2009という次の研究が始動しており、より多くの薬剤が標準治療とされる組み合わせ(エトポシド、ビンクリスチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド)と比較される予定である。

リンク: http://bit.ly/b5waTI