2010/03/19

非定型脈絡叢乳頭腫

Atypical choroid plexus papilloma: clinical experience in the CPT-SIOP-2000 study.

非定型脈絡叢乳頭腫:国際共同臨床研究CPT-SIOP-2000の結果より

J Neurooncol. 2009 Dec;95(3):383-92

要約

非定型脈絡叢乳頭腫(atypical choroid plexus papilloma: APP)とは、新たに分類された、脈絡叢腫瘍(choroid plexus tumor: CPT)の中間悪性度亜型であり、臨床成績はまだ報告されていない。今回、われわれは現在進行中のCPTの臨床研究、CPT-SIOP-2000に登録された患者群の最初の分析結果を報告する。

化学療法を要する患者の国際登録と無作為化試験が2000年に始まった。APPに対しては、最大限外科的に摘出することが推奨された。術後、完全摘出できた患者は経過観察を行い、一方不完全摘出または転移を伴うAPP患者には、6コースの化学療法(エトポシドとビンクリスチンに加え、カルボプラチンまたはシクロフォスファミドを投与)が行われた。リスクに応じて、放射線療法は3歳以上の患者のみに行われた。

中央診断で確認されたCPT患者106人中、30人がAPP、42人が脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma: CPP)34人が脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma: CPC)であった。APP患者(中央年齢0.7歳)はCPPやCPCの患者(ともに中央年齢2.3歳)に比べて、有意に低年齢であった。完全摘出は68人(64%)の患者で可能であった(CPP:79%, APP:63%, CPC:47%)。診断時に転移が認めたのは、APPの17%、CPPの5%、CPCの21%であった。術後化学療法を受けた9人のAPP患者全員において、化学療法2コース後に早期の反応を認めた:完全奏効2人、部分奏効4人、不変3人。経過観察群の15人については、1人に再発が見られたが、現時点で全員生存中である。化学療法群においては、診断時に転位を認めた、不完全摘出後の1人が腫瘍死した。

APPの診断は組織学的に定義されるが、腫瘍増殖マーカーであるKi-67/Mib-1と、腫瘍抑制タンパクp53の陽性率中央値は、3つの亜型で増加しており、CPPよりもAPPさらにAPPよりCPCで陽性率が高かった。これは、CPTの亜型が、悪性度に応じた一般的な分類であることを示唆する。

この順序は、研究プルトコールに則って治療を受けた92人の患者の臨床成績によっても、改めて確認することができる。5年無病生存率は、39人のCPPで92%、24人のAPPで83% 、そして29人のCPCで28%であった。同様の治療成績の順序は、全106人の登録患者の無病生存率においても認められた。APPの化学療法への反応は良好であった。APPがCPPとCPCの中間に位置することは、臨床データからも示された。

コメント

稀な小児脳腫瘍である、脈絡叢腫瘍の国際多施設治療研究である、CPT-SIOP-2000 http://choroidplexustumors.com の中間報告である。本腫瘍のように希少な小児脳腫瘍の診療成績を向上させるには、国際的な共同治療研究を行うしかないが、CPT-SIOPはその成功例といえる。中央診断率の高さにも注目したい(全登録症例133中、116症例で中央診断)。

本報告は、CPT-SIOP-2000の包括的な最終報告ではない。2006年に新たに提唱された中間悪性度群非定型脈絡叢乳頭腫(atypical choroid plexus papilloma: APP, WHO Grade 2)の臨床像と組織像、さらには免疫組織染色による生物学的特性をに焦点を当てた分析が、主眼となっている。APPが臨床的にも組織学的にも、そしておそらく生物学的にも、良性腫瘍と考えられる脈絡叢乳頭腫(choroid plexus papilloma: CPP, WHO Stage1)と、明らかに悪性の脈絡叢癌(choroid plexus carcinoma: CPC, WHO Stage3)の中間に位置する、明確な亜群であることが、示された。

CPT-SIOP-2000の、主要な目的は、化学療法レジメンにおいて、カルボプラチンとシクロフォスファミドを比較することであるが、その結果はまだ明らかになっていない。しかし、ハイリスク群(完全摘出できないAPPやCPC)の治療成績は、まだまだ満足できるものでないことは、この中間報告が示している。

CPT-SIOP-2009という次の研究が始動しており、より多くの薬剤が標準治療とされる組み合わせ(エトポシド、ビンクリスチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド)と比較される予定である。

リンク: http://bit.ly/b5waTI

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