2009/11/04

小児低悪性度グリオーマに対する、放射線療法の晩期障害

Late effects of conformal radiation therapy for pediatric patients with low-grade glioma: prospective evaluation of cognitive, endocrine, and hearing deficits.

小児低悪性度グリオーマに対する、原体照射放射線療法の晩期障害:認知、内分泌および聴力障害の前方視的評価

J Clin Oncol. 2009 Aug 1;27(22):3691-7. Epub 2009 Jul 6.

目的

原体照射放射線療法を受けた、低悪性度グリオーマ小児患者における、晩期障害を検討するため、前方視的調査を行った。

対象と方法

1997年8月から2006年8月にかけて、78人の小児低悪性度グリオーマ患者に対して(平均年齢9.7歳、標準偏差±4.4歳)、10mmの臨床標的体積マージンを用いて、54Gyの原体放射線照射を行った。腫瘍の発生部位は間脳(58人)、大脳半球(3人)、小脳(17人)であった。認知、内分泌および聴力障害を発見するために、治療前と治療後に連続して定期的な評価を行った。臨床的要因および、放射線照射を受けた特定の正常組織の体積と、障害の関連を検討した。

結果

原体放射線照射後5年間の、認知機能への影響は、患児の年齢、1型神経線維腫症の有無、腫瘍の部位および体積、手術による摘出度合い、そして放射線照射量との間に、関連が見られた。年齢による影響は、照射量による影響よりも大きかった;5歳未満の患児において認知機能が最も低下した。放射線治療開始前に、検査を行った患児の24%に成長ホルモン分泌異常が、12%に早発思春期が認められた。治療後10年間に各種ホルモン療法が必要となった累積確率は以下の通り:成長ホルモン補充48.9%、甲状腺ホルモン補充64.0%、糖質コルチコイド補充療法19.2%、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ療法34.2%。いずれかの音域において、治療後10年間に聴力障害が発生する累累積確率とその標準偏差は、5.7%±3.3%であった。

結論

我々の知る限り、本研究は、放射線療法を受けた小児低悪性度グリオーマ患児を前方視的に観察した、最も大規模な研究である。副作用は限定的で、多くの患者において予想範囲内であった。しかし、本研究によって、年少児において放射線療法をできるだけ遅らせるべきであるということを再確認した。また、正常脳への照射を抑えることによる患者利益も明らかにした。

コメント

昨日紹介したSt.Jude小児病院放射線科からの第2報である。放射線療法は、低悪性度グリオーマに対する、最も有効な非外科的治療であるが、一方で長期生存が見込まれる低悪性度グリオーマ小児患者にとって、その晩期障害は重大な問題である。マージンを少なくし正常な脳への照射を最小化し、治療前と治療後に、詳細に長期にわたるフォローアップと評価を行った、非常に貴重な研究結果である。認知機能低下は、患児全体で見れば、治療前IQ98から治療後IQ90と低下は限定的であったが、低年齢でになればなるほど認知機能低下は著しく、これまでの知見を裏付けた。また、本研究がユニークであるのは、1型神経線維腫症の有無や、腫瘍の部位、手術による摘出度合いなども、認知機能障害に影響があることを明らかにしたことであろう。小児低悪性度グリオーマは、非常に多様な臨床像と経過を示し、治療法の選択は非常に難しいが、本研究の結果を参考に、個々の患者の晩期障害のリスクを詳細に評価し、最善の治療法選択を行いたい。血管障害については第1報に詳しい。

PubMedリンク http://bit.ly/1Alsw3

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