2010/02/03

頭蓋内胚細胞腫瘍に対する、化学療法

Primary chemotherapy for intracranial germ cell tumors: results of the third international CNS germ cell tumor study.

頭蓋内胚細胞腫瘍に対する、化学療法を中心とした戦略:第3期国際中枢神経胚細胞腫瘍治療研究の結果報告


Pediatr Blood Cancer. 2010 Mar;54(3):377-83.

背景
中枢神経系の胚細胞腫瘍の治療に関しては、まだ議論のあるところである。本研究の目的は、化学療法単独による治療の効果と、副作用などの影響を、放射線療法と比較して、明らかにすることである。

方法
2001年1月から2004年12月の間に、新たに中枢神経胚細胞腫と診断された患者が、リスクに応じて階層化され、異なった2種類の化学療法レジメンで治療された。4ヶ月から24.5歳までの25人の患者が階層化された。シクロフォスファミドとエトポシドの2剤組み合わせと、カルボプラチンとエトポシドの2剤組み合わせを交互に合計4-6サイクル行うレジメンAは、限局性で髄液と血液中の腫瘍マーカーが正常値の胚腫(ジャーミノーマ)の低リスク群(LR)に対して行われた。一方、カルボプラチンとシクロフォスファミドとエトポシドの3剤組み合わせを、合計4-6サイクル行うレジメンBは、髄液または血液中のβHCG値が上昇しているが50mlU/ml以下のジャーミノーマの中間リスク群(IR)と、非ジャーミノーマ性悪性の要素が生検で証明されたMMGCT群、髄液または血液中のアルファフェトプロテイン(AFP)が陽性の群、髄液または血液中のβHCG値が50mlU/m以上に上昇している群からなる高リスク群(HR)に対して行われた。

結果
11人の患者がLR群、2人がIR群、12人がHR群に階層化された。17人(68%)において、2コースの化学療法後に、19人(76%)において2コースの化学療法後に、画像上の完全寛解および、マーカーの低下が観察された。11人が中央値30,8ヵ月後に再発した。そのうち8人が再発後に放射線療法を受けた。6年無病生存率および生存率は、それぞれ45.6%と75.3%であった。

結論
本研究で行われた集中的化学療法レジメンは、放射線療法を含んだ治療レジメンよりも、治療効果が低いことが証明された。現時点において、中枢神経胚細胞腫瘍の標準的治療は、純粋なジャーミノーマにおいては、放射線療法を、単独治療または化学療法の併用のどちらかのかたちで、含むレジメンであり、非ジャーミノーマでは、放射線療法と化学療法の併用レジメンである。

コメント
化学療法に対して感受性の高い胚細胞腫瘍を、放射線療法なしで治癒ようとする試みは、本研究においても不成功であった。放射線治療は非常に有効で、短期的には安全な治療法でもあり、現時点で標準治療であることは異論がない。しかし、成長期の脳の中心に高い放射線量を与えることによる、知能や情緒への長期的な影響は非常に懸念される。とくに、放射線治療による生存率が90%を超えるジャーミノーマにおいて、一部の患者で放射線療法が不要なことは、証明されている。しかし残念ながら、治療前にどの患者に放射線治療が必要かという予測は、現時点で不可能である。臨床研究だけで、この問題に答えるのは限界である。生物学的な研究を進め、本腫瘍の性質を解明し、臨床データと照らし合わせて、放射線治療が不要な群の予測することとと、副作用の強い細胞障害的化学療法に代わる標的薬を発見することが、今後の課題であろう。

リンク:http://bit.ly/bByFDz

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