2010/01/10

髄芽腫に対する分子標的治療

Treatment of Medulloblastoma with Hedgehog Pathway Inhibitor GDC-0449

ヘッジホッグ経路阻害薬GDC-00449による髄芽腫の治療: 一例報告

N Eng J Med. 2009 Sep 17;361(12):1173-8. Epub 2009 Sep 2.

要旨
髄芽腫は、小児においてもっとも頻度の高い悪性脳腫瘍である。ヘッジホッグシグナル経路の異常な活性化が、一部の髄芽腫の発生に関与していると、強く示唆されている。複数の治療法に抵抗性での転移性髄芽腫の26歳男性患者に対し、新しいヘッジホッグ経路阻害薬GDC-00449による治療が行われた。一過性ではあるが、急速な腫瘍の縮小と症状の緩和効果がみられた。本治療前に採取された腫瘍検体の分子生物学的検査結果から、ヘッジホッグシグナル伝達の重要な負の制御因子である、patched homolog 1 (PTCH1) 遺伝子における、ヘテロ接合性の消失(Loss of heterozygosity: LOH)と、遺伝子変異が腫瘍細胞で起こっていたことが示唆された。

コメント
髄芽腫のゲノミクス解析により、髄芽腫の分子遺伝生物学的に複数のサブタイプに分類され、サブタイプの臨床的な性質や治療への反応性なども、分析が進んできている。分子学的サブタイプ分類の最終目的は、腫瘍の性質に合わせた、最適のオーダーメード治療法を提供することである。分子標的治療薬の、オーダーメードがん治療への応用が期待されている。髄芽腫において、ヘッジホッグシグナル経路の異常な活性化を示すサブタイプが存在することは、複数の報告から明らかになっている。今回、成人症例における臨床試験外での例外的使用という条件ではあるが、ヘッジホッグシグナル経路に対する分子標的が髄芽腫に対して、一定の効果を示したことは、手術、放射線治療、細胞障害性化学療法による集学的治療に抵抗性を示したり、治療後再発をしたケースへの有望な治療法となる可能性を示したといえる。また、一定の長期生存および治癒率を見込める一方で、非常に副作用と晩期障害が強い現在の標準治療に取って代わる、毒性の低い治療法となる可能性も秘めている。

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