Phase II Trial of Conformal Radiation Therapy for Pediatric Low-Grade Glioma
小児低悪性度グリオーマに対する原体照射放射線療法の第II相臨床試験
J Clin Oncol. 2009 Aug 1;27(22):3598-604
目的
小児低悪性度グリオーマ、特に年少児に対する、放射線療法の使用に対して賛否が分かれる。10mmの臨床標的体積(clinical target volume:CTV)のマージンを用いて、原体照射放射線療法による腫瘍コントロール効果を判定すべく、第II相臨床試験を行った。
対象と方法
1997年8月から2006年8月にかけて、中間年齢8.9歳(2.2-19.8歳)の低悪性度グリオーマ患児78人に対し、54Gyの放射線量を、10mmのCTVマージンを用いて照射し、計画的にMRIによる評価を行った。腫瘍の発生部位は間脳(58人)、大脳半球(3人)、小脳(17人)であった。67人がWHOグレード1の腫瘍、25人が過去に化学療法を受けており、13人が神経線維腫症1型であった。
結果
89ヶ月の中央観察期間中、13人が腫瘍の進行を認めた。うち、1人は照射野辺縁部位における進行、8人が局所進行、4人が遠隔転移であった。5年および10年の平均無病生存率と標準偏差はそれぞれ、87.4% ± 4.4%、74.3% ± 15.4%であった。また5年および10年の平均全生存率と標準偏差はそれぞれ、98.5% ± 1.6%、95.9% ± 5.8%であった。局所進行の5年および10年の平均通算確率と標準偏差はそれぞれ、8.7% ± 3.5%、16.4% ± 5.4%であった。血管障害の治療後6年時点での平均通算確率と標準偏差は、4.79% ± 2.73%、あり、この確率は放射線治療時に5歳未満であった患児で高かった(P = 0.0105)。
結論
今回、放射線療法を受けた低悪性度グリオーマ小児患者の大規模な前向き臨床試験によって、10mmのCTVマージンを用いても、腫瘍のコントロール効果は落ちないことが示された。本結果によって、年少児への放射線照射は、血管障害のリスクを下げる意味でも、出来るだけ遅らせるべきであることを示唆している。
コメント
St.Jude小児病院の放射線科からの報告である。摘出が困難、または摘出に神経的障害の可能性が高い、低悪性度グリオーマの治療に関しては、患者の年齢が低い場合(明確な基準はないが、8-10歳未満は低年齢と考える)まずは化学療法で腫瘍の進行を出来るだけ遅らせ、コントロール不良のときに、放射線療法を行うというのが、現在のスタンダードである。また、手術で完全にとりきれなかった場合も、追加治療をあせらず、残存腫瘍が進行するか見極めるために経過観察を行うという方法がある。小児の脳への放射線療法による障害は常に懸念されるが、腫瘍への照射量を最大化し、腫瘍以外への照射を極力抑える、現代の原体照射法等を用いれば、十分な腫瘍コントロールが得られることが、今回の報告で分かった。しかし、中長期的な効果と副作用、とくに短期的にも血管障害の頻度は高く、さらに今回全く評価されていないのが、認知機能障害である。非常に貴重な多数症例の研究であり、長期フォローアップの経過報告を待ちたい。
PubMedへのリンク http://bit.ly/3ON4VD
0 件のコメント:
コメントを投稿