Whole-Genome Profiling of Pediatric Diffuse Intrinsic Pontine Gliomas Highlights Platelet-Derived Growth Factor Receptor α and Poly (ADP-ribose) Polymerase As Potential Therapeutic Targets.
脳幹グリオーマ(びまん性中心性橋部神経膠腫)のゲノム網羅的解析は、血小板由来成長因子受容体PDGFRαおよび、ポリ(ADP-リボース)合成酵素PARP1が、治療標的である可能性を示唆する。
J Clin Oncol 2010 28 (8): 1337
目的
びまん性中心性橋部神経膠腫(DIPG)は、もっとも悲惨な小児悪性腫瘍のひとつであり、効果的な治療法が存在しない。治療研究の成果が出ない主要な原因として、脳幹腫瘍の生物学的特性がテント上に発生する成人の高悪性度グリオーマと同一であろうという前提があげられる。この小児の腫瘍をより特異的に標的とした治療薬を開発するためにDIPGそのものの生物学的特性を、よく理解する必要がある。そこで、我々は欠如している知識を埋めるべく、今回始めて、一連のDIPG症例に対して、高解像度の一塩基多型(SNP)マイクロアレイによる分析を行った。
患者および方法
これまで再多数となる、11検体(9例は剖検標本、2例は治療前生検標本)が、SNPアレイ(Affymetrix 500Kまたは6.0)にハイブリダイゼーションされた。本研究は、当施設の倫理委員会で承認された。すべてのマイクロアレイ結果は、定量的PCR、FISH法、マイクロサテライト分析によって確認された。
結果
DNAコピー数異常の分析結果、DIPGでは、小児テント上高悪性度グリオーマとは異なる、頻繁に認められるコピー数異常を認めた。36パーセントのDIPGで、血小板由来成長因子受容体α遺伝子(PDGFRA, 4-18コピー)のコピー数異常を認め、全例でPDGFR-αの発現を認めた。ポリADPリボースポリメラーゼ-1(重合ADPリボース鎖をタンパク質に付加する酵素: poly (ADP-ribose) polymerase:PARP-1)の軽度のコピー数増加が3症例において認められた。遺伝子経路解析によって、ヘテロ接合性欠失(Loss of Heterozygosity: LOH)は、DNA修復経路に集中して認められることが判明した。
結論
われわれの知る限り、初めての小児DIPGにおける包括的で高解像度のゲノム解析結果である。われわれは、PDGFR経路が高頻度に関与しており、またPARP-1の増幅とともにDNAの修復経路の欠失が認められることを発見したが、このことは、この悲惨な腫瘍に対する治療標的として、生物学的にも可能性が高い2つの分子を示唆している。
コメント
現在、有効な治療法が無く、ほぼ100%致死性の脳腫瘍である、びまん性脳幹グリオーマは、その部位から摘出どころか、画像上典型的な場合は生検も禁忌となっている。治療成績が最悪でありながら、生物学的研究すら行えないという、非常に不幸な脳腫瘍であるが、熱心な研究者と献身的な患者家族の理解によって、この貴重な研究が行われた。テント上悪性グリオーマと生物学的に異なる腫瘍であることは、これまでの新薬を試す臨床試験がことごとく無効であったことを裏付けている。今後は、本研究と同様な研究を重ねて、この腫瘍の生物学的特性上、効果が期待される薬物を優先的に試すべきである。
リンク:http://bit.ly/aQjI8V
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