Molecular staging of intracranial ependymoma in children and adults
小児および成人の頭蓋内上衣腫における分子生物学的ステージング
Clin Oncol. 2010 Jul 1;28(19):3182-90.
要旨
目的:現在のステージング方法において、頭蓋内上衣腫の生物学的な性質は、予想が困難である。上衣腫の現行の分類基準を補完する、分子生物学的ステージングを作成するために、上衣腫細胞において高頻度で見られる遺伝子異常を同定し、その予後に与える影響を評価した。
対象と方法:スクリーニングコホートとして、122人の上衣腫患者の標準的治療を行う前の検体を用い、比較ゲノミックハイブリダイゼーションアレイ(array CGH)を行った。予後因子としての可能性があるDNAコピー数異常について、170人の独立した上衣腫患者コホート殻の検体を用い、FISH法によって、確認を行った。コピー数異常は、臨床情報、組織病理学診断結果、そして生存データとの’関連を検討した。
結果:スクリーニングコホートにおいて、1q(1番染色体長腕)の増加およびCDNN2A遺伝子(p16癌抑制遺伝子)のホモ欠失が、もっとも有力で独立した予後不良因子であった。対照的に、染色体9、15q、18の増加と染色体6の減少は、予後良好因子であった。これらの結果に基づいて、3つの遺伝学的リスク群からなる、分子生物学的ステージングシステムを作成し、確認のためのコホートにおいても、予後予測の正確さが確認された。likelihuud ratio testや多変量Cox regression解析によっても、これらの新たな遺伝学的マーカーを追加することで、既存の予後因子よりも予後予測の正確さが向上することが示された。
結論:上衣腫において、ゲノム異常は病気の進行と生存率に対する、強力かつ独立したマーカーである。遺伝的マーカーをを、既に確立された臨床的および組織病理学的要素に追加することにより、治療結果の予測を向上させることができる可能性がある。本分析は通常のパラフィン固定標本においても行うことができるため、人口ベースのコホートを対象にした多施設臨床研究において、これらのマーカーの有効性を確認することは、すぐにでも可能である。
コメント:上衣腫は小児の脳腫瘍のなかで3番目に多く、決して満足のいく治療成績とはいえない脳腫瘍である。生存率の向上に寄与すると考えられる化学療法がまだ見つかっておらず、手術と放射線療法が治療の中心である。しかし、放射線治療が若年患者に与える影響は大きく、放射線療法を減量、または省略する治療研究の対象を選ぶことは、緊急の課題である。本研究が明らかにした、予後不良マーカーは他の研究でも示唆されており、有望性が高い。また、このような研究からさらに詳細な予後不良遺伝子異常が見つかれば、新たな治療標的としての期待も高まる。
リンク http://bit.ly/bJ7C4e